これは「はじめての Stable Diffusion WebUI(AUTOMATIC1111) をローカルPCで動かし、外付けSSD にモデルや出力を移し替え、さらには ALLPOWERS R600 をUPS的に使って電源テストまで行った」一連の体験記です。手順そのものだけでなく、つまずきややり直しも包み隠さず書き残しました。未来の自分への整備ログでもあり、これから挑戦する方の背中をそっと押す記録でもあります。
ローカルPCの推奨スペックと、今回の実機メモ
ローカルで快適に回すには、体感的にも以下が目安です(いくつかは一般的な情報を参照し、断定しすぎない表現にしています)。
- CPU:6コア以上
- メモリ:最低16GB、32GB以上推奨
- GPU(VRAM):最低8GB、16GB以上推奨
- ストレージ:SSD 512GB以上
- OS:Windows 10/11
自分の環境ではCドライブが 1TBのSSD で、残り容量が135GB → 285GB に増えるよう整理しました。速度は CrystalDiskMark で計測し、Cドライブはだいたい リード約2,000MB/s級(計測時の条件で変動)、外付けのUSB 3.2 Gen2接続SSD(Hドライブ)は リード/ライトともに約1,000MB/s前後 と良好。HDDのDドライブは当然ながら遅く、モデル置き場には向かないと再確認しました。
用語メモ:
VRAM:GPUのビデオメモリ。画像生成の「同時並列の材料置き場」。
LoRA:軽量な追加学習。「ベースモデルに後付けでキャラや画風を足す」拡張。
Checkpoint(モデル):画像生成の土台。最初に読み込む核となるファイル。
外付けSSD運用:モデルや出力をCから外へ逃がすことで「速度と容量」の両立を狙う。
インストールの実録(Python → Git → WebUI)
今回の導入は王道の三段構え。公式ページで最新版を入れるのが安心です。
- Python をインストール(3.10系推奨)。PATHに追加、バージョンは
python --version
で確認。 - Git for Windows をインストール。
git --version
で確認。 - AUTOMATIC1111のWebUI を
C:\AI
などにgit clone
。
最初の起動は webui-user.bat
。GPUや環境によって初回は依存関係のダウンロードやビルドで時間がかかります。自分の環境では起動ログに xformers
が入り、VRAM節約の --medvram
も併用。起動引数は次のように設定:
@echo off
set PYTHON=
set GIT=
set VENV_DIR=
set COMMANDLINE_ARGS=--xformers --medvram --lora-dir "H:\SD\models\Lora"
call webui.bat
ポイント: --lora-dir
を使って LoRAの保存先を外付けSSD(H:) に固定。モデル(Checkpoint)は H:\SD\models\Stable-diffusion
に集約し、WebUI側はC:\配下から シンボリックリンク を貼って参照させる運用にしました。容量節約と読み込み速度のバランスがよく、Cの残容量が息を吹き返します。
WebUIの設定と「LoRAをカードからクリックで挿入」問題
セットアップが進んだら、Settings → Extra Networks を整えます。特に自分が悩んだのが、LoRAカードをクリックしたときに挿入されるトークン名。初期値だと エイリアス が入ってしまい、<lora:Fff:0.8>
のように「ファイル名じゃない名前」が挿入されました。
ここを 「When adding to prompt, refer to Lora by」→ Filename に変更。そして 「Add Lora hashes to infotext」 もONにしておくと、画像のメタ情報から再現しやすくなります。以後はカードをクリックすると <lora:Realistic_Elle:0.8>
のようにファイル名で挿入されるようになり、プロンプト管理がスッキリしました。
なお、今回の外付けSSD側の構成は次の通り(例)。
H:\
└─ SD\
└─ models\
├─ Stable-diffusion\ (ベースモデル)
└─ Lora\ (LoRA/外付けに集約)
モデルと出力の外付けSSD運用:速度と余裕の両立
モデル(Checkpoint)とLoRA、出力フォルダーをHドライブのSSD に移しました。USB 3.2 Gen2 でPCに直結しているので速度は十分。実測は リード/ライト約1,000MB/s前後。出力フォルダは WebUI の Settings → Saving images で H:\SD_outputs
に変更。SSDに出力すると、生成後のプレビュー表示やファイルの閲覧が軽いのが地味に嬉しい。
LoRAの導入と、初めて「LoRAなし」で作った一枚
LoRAの置き場は H:\SD\models\Lora
。Civitaiからダウンロードした .safetensors
を入れてWebUIをリロードすると LoRAタブ にカードが並びます。今回、設定が固まる前にLoRAを使わずに生成した最初の一枚が下の画像。今見ると少し拙さもあるけれど、「自分の環境がはじめて動いた瞬間の震え」を忘れたくないので、ここに残しておきます。
夜の街に立つ女性、ヘッドホンをつけ革のジャケットを着たサイバーパンク風ポートレート
以後は LoRA(たとえば Realistic_Elle や afg13_Qwen など)を組み合わせ、重み(例:0.5~1.0) を変えながら出力の差分を楽しむ流れに。Hires.fix での二段解像度アップ、R-ESRGAN 4x+ などの アップスケーラー を使うと仕上がりにグッと実写感がのります。
ALLPOWERS R600 を導入:理由と実測、UPS的使い勝手
非常時のバックアップ電源兼、PC+大型モニターを瞬断から守る「擬似UPS」として ALLPOWERS R600 を購入しました。候補は他にもありましたが、定格600W前後・価格・サイズ のバランスでR600に。iPhone 16 Pro Max とは Bluetooth 接続も問題なく、アプリから残量・入出力ワット数が確認できました(特別な設定は不要でした)。
接続機器は 43インチモニター、メインPC、AOOSTARのミニPC、スピーカー。アイドル時155W前後、Stable Diffusionで生成中(ピーク)に420W まで上昇。ファン音はほぼ気にならず、筐体は「ほんのり温かい」程度で安定。AC電源を抜いて瞬断を発生させても、R600がスムーズに給電へ切替し、PCは落ちませんでした。
なお、外付けSSDはPCの USB 3.2 Gen2 から給電&接続。速度は期待どおりで、R600経由にしたことでの速度低下も体感なし。
注意: R600は公式にUPSを謳う製品ではないはずなので、UPSの完全代替としての長期常用は保証面を含めて要確認だと感じました。ただ、短時間の瞬断対策や停電時の退避電源としては十分に「心強い」。
生成環境の安定化:自分なりのベストプラクティス
- 起動オプション:
--xformers
と--medvram
でVRAMを節約。 - モデル置き場の分離:Checkpoint/LoRAは外付けSSD(H:)に固定。CドライブはVenvやWebUI本体に限定。
- LoRAの呼び出しはファイル名で:Extra Networks → Filename を選び、再現可能性を上げる。
- 出力先もSSD:
H:\SD_outputs
に。大量出力でもCが詰まらない。
この体制にしてから、Cドライブ残量に怯えない・モデル増やしても体感が落ちない・瞬断でPCが落ちない の三拍子が揃いました。「生成すること」に集中できるのが何より大きい。
参考リンク(外部)
Stable Diffusion と環境構築に関する Q&A
Q. Checkpoint と LoRA はどう違うの?
A. Checkpoint はベースモデルで、生成画像の「基盤」。LoRA は軽量の追加学習で、特定のキャラや画風を「後付け」できます。
Q. VRAM が足りないとどうなる?
A. 生成が失敗したり極端に遅くなります。--xformers
や --medvram
を併用しても限界はあるので、8GBを最低ライン、16GB以上あると安心だと言われています。
Q. モデルや LoRA はどこから入手するの?
A. 代表例は Civitai。ただし配布物ごとに利用規約・ライセンスが異なるので要確認です。
Q. 外付けSSDに置くメリットは?
A. 読み書きが速く、Cドライブの空き容量を守れます。モデルの大量導入や差し替えも楽。USB 3.2 Gen2接続なら体感も良好でした。
Q. R600 をUPS代わりに使って大丈夫?
A. 今回のテストでは瞬断で落ちませんでした。ただし「UPS専用」と謳う製品ではない点に留意。長期常用は寿命や保証条件の確認が必要だと感じています。
Q. 画像の細かい質感(肌や髪、金属)を上げるには?
A. Hires.fix による2段階生成、適切な Sampler と Steps、R-ESRGAN 4x+ 等のアップスケーラー、そしてLoRAやVAEの相性調整が効きます。
——ここまでのメモは、自分の失敗と成功の積み重ねです。外付けSSD運用で身軽に、LoRAで遊び心を、R600で安心を。明日もまた、プロンプトとにらめっこしながら一枚を生み出します。
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